#38 漆黒の聖母マリア【前編】

自由奔放すぎたスペインひとり旅|2008.10.28

只今、10月30日の午後4時。

行き(トレド → クエンカ 7:00発)は私を入れて2人だけだったのに、帰りは何故か高校生だけで満席状態だ…それも85%以上が女の子で、みなワイワイガヤガヤ話している。

この騒がしさの中で10月28日を振り返って果たして良いのだろうか…?





朝8:00発のバスに乗って、途中乗り換えのTalaveraに到着したのが9:30近く。ここまでで、まず1時間半。すぐに乗り換える事ができて(運命的!)そこから目的地までは、さらに2時間半かかった。つまり、バスでToledoから合計4時間のバスの旅を経て、山々を越えてGuadalupeに到着したのは、12:30。全てが運命的だったのかもしれない。まっすぐサンタ・マリア・デ・グアダルーペ王立修道院(Real Monasterio de Nuestra Señora de Guadalupe)に向かうと、次のグループ・ツアーは12:45からだという。つまり、シエスタ前の最後のツアーに間に合ったのである。ここは、ガイド(スペイン語)同伴でグループでしか回る(見学する)ことができないようになっている。

その重要性には、ツアーが始まってから気づくことになる。

12:45近くに戻った時には、人が集まって待っていた。ガイドのお兄さんが登場、静かにグループを招き入れる。

グループは10人に満たないくらい。(おそらくほとんどがスペイン語圏ではない観光客。英語圏というわけでもないようだった。)

グレゴリオ聖歌のために実際に使われていた直筆の楽譜などが展示されている部屋をガイドと回りながら、遠くからかすかに男声(一声)のグレゴリオ聖歌が聴こえてきていて、その厳かな雰囲気に、胸がすでに熱くなっていた。

いくつかある展示室を1部屋ずつガイドが解説してくれて、その後、少しの自由時間が与えられ、その間に皆、思い思いに見学する。一つの展示室の見学を終える度に、次の展示室へと案内されてから、ガイドが見学の終了した部屋の扉を閉めて、鍵をかける…。

修道院(?)としても機能しているため、中央の廊下ではガイドもほとんど一言も発することなく進む。

回廊では、僧侶のおじいさんが安らかな顔で見守っている。

ガイド同伴での見学が終わると、「この先のエリアを見学し、詳しい解説を聞きたい方は残って下さい」と言ってガイドは部屋を出ていった。先ほどから、ちょくちょくグループと遭遇しては静かな表情で見守っていた、安らかでおおらかな表情をたたえた白髪の僧侶のおじいさんが、この先のガイドだったのである。

おじいさんは、とても柔らかく、おおらかに、ゆっくりと、しかし、はっきりとした強いr発音の入ったスペイン語で、その先の部屋の解説を行ってくれた。言葉少なく、一言一言の間にゆっくりと間をおいて話す僧侶のおじいさんの解説は絶妙であった。

そして、ついに木製の聖母マリア像とイエス像のある部屋へと、静かに足を踏み入れる…。





後編に続く…