#47 コルドバの涙と前兆

自由奔放すぎたスペインひとり旅|引き続き 2008.11.02

なんとなく最寄り駅までの道は覚えたつもりだったので、バックパックを背負って歩いて駅まで行ってみることに。

コルドバを出発する前にもう一度だけメスキータを見ようと、そちらの方向に向かっていたら、宿を出発してたった3分くらいのところで中年くらいの男女が私の方向に歩いてきて、

「안녕하세요」

と声をかけてきた。もちろん、アニョハセヨくらいは知っていたので、私も自然と、できるだけ韓国人の発音に寄せて「안녕하세요」と答えたら、彼らがそのまま韓国語で話しかけてきた。

「私は韓国人ではなくて、日本人なんです。」と伝えると、すぐに英語にスイッチを切り替えてくれた。すると、男性の方が私に近づいてきたと思ったら、私のバックパックに手をかけて、てきぱきとストラップやベルト部分の長さ調節をし始めてくれて、「どのくらいの時間、この状態でバックパックを背負ってたの?」「これではだいぶ肩に負担がかかっていたでしょう?」と心配してくれた。なんていい人だろう!

その男性がストラップの調整をしてくれると、なんと、これまでよりもずっと肩への負担が軽減されたように感じられた。他にもバックパックの背負い方についていろいろとアドバイスをくれて、とても有難かった。おそらくアウトドア派の方だったのだろう。

お礼を言って別れ、また一人で道を下っていきながらメスキータの方へ向かったところ、のちほどメスキータの前でもまた彼らを見かけたので、嬉しくなって、

감사합니다 / カムサハムニダ (感謝します)!」

と大きな声で伝えた。彼は遠くから笑顔で手を振り返してくれた。なんて素敵な人たちだろう、私は本当にラッキーだ!と思った。

駅までの道を、(途中、何人もの人たちに道を尋ねながら)歩いていき、到着してから次の目的地であるSevillaへのバスのチケットを購入した。

バスはコルドバを17:15に出発し、19:30頃にセビージャに到着した…

と、セビージャについて話し始める前に、まずはこのバスが出発する際に何があったのかを、書き記しておく必要があるだろう…

宿で同室になった例の彼とは、きっとまた会えると信じつつも、実際には、彼のことを思い出しては、2人で語り合ったこと、彼と一緒にダンスしたこと、彼とキスをした瞬間のことなどがまだ頭から離れなかった…すると、バスに乗り込みながら少し悲しい気持ちに浸っていたところにさらに追い打ちをかけるように、若いカップルが目に入ってきた。男の子の方がバスの中で私の真ん前の席に座っていて、女の子はバスの外に立っていて、互いにしばしの別れを悲しんでいるという状況だった。彼らは電話で話をしながらお互いの愛の深さを確かめ合っていたようだった。やがてバスが動き出すと、男の子の方はもう耐えきれなくなって泣き出してしまった。彼らを目の前で見ているのがとても辛くて、私も秘かに涙を流してしまった…

ふと、バスのチケットを取り出してそれに目をやると、その記載事項の中に、なんと偶然、例の彼と同じ苗字が記載されていた。なんて事だろう。スペインの旅を始めてから、まだそんなにこの苗字を見たことはなかったはずなのだが、ここへきて、彼の苗字がたまたま、たった今この目に入るだなんて、何かのサインのような気がしてならなかった。

夕刻にコルドバを離れていくバスの窓から見える空は、もうまもなく太陽が夕陽に移り変わっていくところで、とても美しいものだった。それは、オレンジ色でいて、黄色でもあり、淡いブルーと混じり合い、白くもあり、クリーム色にも滲んでいて…とてつもなく綺麗だった。そしてなんと、沈みゆく夕陽の右手の方には、虹が縦にまっすぐかかっていたのだ。それは驚くほどに美しい光景だった。あれほど美しい虹なのだから、たしかに、確実に私に対して何らかのサインを送ってくれているのだろうと感じざるをえなかった。

新しい何かの始まり…

これはきっと、これから始まるすばらしいfriendship/relationshipの前兆。

そう教えてくれているのだと信じたい!