#22 私がこれまでの人生で最も理論的思考に背を向けて逃げたいと思った一日

自由奔放すぎたスペインひとり旅|2008.10.13|

今日は特に何をしたというわけでもなかった。今日のまとめだけ、書いておこう。

郵便局に行き、旅先からのポストカードを送った。今日は8枚。

Donにヨガのクラスに連れていってもらった。

スーパーでの買い出し、それから、本屋さんとおもちゃ屋さんに一緒に行った。



と、この日は何の変哲もない日記の内容でした。

ところが、実はこの日の夜も例のごとく長時間Donと二人で様々なテーマについて語り合ったのですが、この数日間、彼との議論を朝から晩まで休みなく続いていることにより、私はまるで哲学的視点と理論的思考をなかば強要されているような、そんな気がし始めていました。

Day of Silence

テネリフェは観光中心の島とはいえ、常にゆったりとした時間が流れ、豊かな自然に囲まれ、加えて、避暑地の賑わいと周辺の小さな町の静けさの均衡が素晴らしいほどに保たれています。ここにいることで、心が深呼吸できているような感覚…そんな心穏やかな精神状態で彼と複雑な話題について語り合い続ける事は、次第に困難になってきていたのでした。こういった状況に少なからず複雑な思いを抱えていた私は、この夜、Donにある話を持ちかけたのです。

“私、五感をフルに使ってこの風土を感じたいんです。もし、興味を持っていただけるなら、言語、つまり言葉を使うこと自体をいったんやめ、感覚だけに集中してまわりに注意を向けて過ごしてみるということを一緒に試してみるのはどうでしょう?

私はそれを、”Day of Silence”と称して、翌日の朝に目が覚めた瞬間から、互いにひと言も発さずに意思疎通を図り、自らの五感を研ぎ澄ませることに集中し周囲に注意を払い、それにより得た気づきや感じ取ったことについては、その場ではそれぞれの心の中にとどめておき、後で話し合ってみてはどうかと伝えました。

聡明で優しいDonは、そんな私のへんてこな提案を受け入れてくれました。

こうして私は、この日の翌日から、一切言葉を発さずに一日中誰かと時間や空間を共にし、経験を共有する、という一生のうちでも非常に貴重な体験をすることになるのです。